(第10回)に続く http://goo.gl/Tty3LK
【第一章 ~産みの苦しみ~ その⑩】
平等院裏山から聞こえてくるヒグラシの鳴き声が、また一夏終わると、センチメンタルな気分にさせた。
しかし、自分に課せられた太陽光発電の用地獲得missionをクリアするまで、この夏は終わらない、否、帰れない。底知れぬ恐怖に身震いし、車を前進させて生垣から好好爺が出てこられるのを待った。
「よーし、行こうけー」
後方からの声に驚き、振り返ると平等院の門扉から二本のオロナミンCを振りかざした好好爺が現れ、勢いよく助手席に乗り込んできた。好好爺はいつも予想外の所から現れる。
急遽の移動に乗じてわざと置いてきたオロナミンCを運転席のホルダーに投げ入れると、平等院別館の屋根に輝く太陽光発電を指差し、好好爺はニヤリと笑った。
「あれだろ?」
「あれです!」
~つづく~
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