(前回に続く)
【第1章 ~産みの苦しみ~ その⑪】
聞きたいことはたくさんあった。太陽光発電の用地を僕に貸してくださいと、翻意を促すには絶好のタイミングではあったが、もはや聞くだけ野暮ではという疑念もあった。様々な思いが脳裏をめぐり、最後は聞きたいことを本能に任せて問いかけた。
「何故、隣の家から出てこられたのですか?」
「自分の家だからだろぅ。」
好好爺はオロナミンCの蓋を捨てる場所を探しながら、不思議なことを聞くなぁといった表情で答えた。
「お伺いしたお宅は・・・」
「弟の家。太陽光発電がついているんだから、こっちが俺の家に決まってるだろう。」
弟様とはいえ、他人の家に何時間も上がり込み、勝手にオロナミンCを飲み倒した罪悪感に苛まれながらも、屋根上に設置された太陽光発電という少ないデータの中から推理し、直感で三択から正解を導き出していた自分のギャンブル運の強さに、一人誇らしさを感じていた。
~つづく~
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