2016年3月25日金曜日

シリーズ:土地購入から太陽光発電所引渡まで(第10回)


【第1章 ~産みの苦しみ~ その⑨】

「太陽光発電の件ですが!」
「あーぁ、その事かい・・」

 楽しい会話を遮られた苛立ちか、終わった話をぶり返された怪訝さからか、眉間に深いしわを寄せた好々爺は、続けざまに話そうとする私を右手で制し、中腰の姿勢からひょいと立ち上がり台所へ向かった。

判らない・・内野ゴロを打ったのか、フライを打ち上げてしまったのか。だけれども、バットは振りぬいた。好々爺が戻り、どのような戦況が訪れても、太陽光発電の用地奪還に向け、一塁に全力疾走することに変わりはない。ゲームセットの引導を渡されるまでは

戻ってきた好々爺の右手にはオロナミンCが二本握られており、左手は携帯電話と共に耳元へ添えられていた。無言で差し出されたドリンクを受け取ると同時に通話相手の応答する声が聞こえた。

「大ちゃん? 今東京の人が来てんのよぉ。 太陽光発電の土地の件さね。 家に居る?」

電話を切るや否や、好々爺から荷物を纏め車で待つよう促され、言われるがまま表に出た。流れ的に電話相手は隣町の同級生で、好々爺と同じく、地元の太陽光発電の事業会社に土地を貸してしまった方と推測できた。恐らく、打ち取られてアウトにはなっていない。

しかし、ヒットなのか、はたまた現状維持のボールだったのか、好々爺に確認する機を逸し、これから大ちゃん様のご自宅を同行訪問していただけることだけがぼんやりと見えていた。

~つづく~

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