2016年3月23日水曜日

シリーズ:土地購入から太陽光発電所引渡まで(第8回)

こんにちは、私は太陽光発電の用地仕入れ、施工に携わっていますが、  
皆さんに太陽光発電所をお引き渡しするまでの物語について、シリーズで
お届けしたいと思います。 

【第1章 ~産みの苦しみ~その⑦】

Matsui! 松井ですよね!?


問いかけに、好々爺の目の色の変化が一目でわかった。第三者から見たら、死んだ魚の目をしていた私の方が、明らかに目の色を変えていただろう。3点差、9回裏ツーアウトランナー無しでピッチャーゴロ、万事休すからのファーストエラーで出塁。逆転には程遠い、ゲームセットを一時回避しただけの状況も、この場に留まり、再度打席に立てるチャンスを掴んだ喜びと、太陽光発電とは全く関係のない心の師、松井秀喜について、家族写真の数十倍を客間に飾り、間違いなくMatsui Monster であろう好々爺と談義を交えることのできるときめきの中に、逆転劇の可能性を見出そうとしていた。

Matsuiに対しある程度の造詣があることを感じた好々爺は、力量を見定めるがごとく、


「ホームベース上で飛び跳ねている写真わかるかいな?」

「ポサダのセンター前ポテンヒットに激走し、ホームにスライディングした直後に喜びを爆発させたMatsuiですよね?」


間髪入れずに返ってきた返答に、好々爺の頬はみるみる赤みを帯び、満足そうな笑顔で


「おう!? おう。」


クリーンヒット。好々爺の投じたストレートをライト前にはじき返した実感があった。これでツーアウト一、二塁。勝負事は流れが全て、会話においても隙は与えない。


「ヤンキースの勝利がほぼ確定的となり、Matsuiが打席に立った際に観客席から沸き起こった、優勝の立役者と認めるMVPの大合唱。日本の野球人が世界に通用するところを見せつける最高の舞台でした。そのMVP獲得トロフィーを掲げる雄姿が隣の写真ですよね?」


もう言葉はいらなかった。好々爺は深く深くうなずき、口を真一文字に結んで目を閉じながら微動だにしない。暫く静かな時間が流れた。ひょっとしたら泣いているのかもしれない。私はMVPコールが鳴り響く外野席映像を思い出しただけで泣けてしまい、目頭が熱くなるのを感じていた。共感できない人にはどう説明しても理解してもらえないこの想い。 

一時、太陽光発電のことは思考から消えていた。しかしながらその間にもランナーは静かに出塁し、ツーアウトに変わりはないものの、満塁の局面を迎えていた。


              ~つづく~


0 件のコメント:

コメントを投稿