こんにちは、私は太陽光発電用地の仕入れ、施工に携わっていますが、
【第一章 ~産みの苦しみ~
皆さんに太陽光発電所をお引き渡しするまでの物語について、シリーズで
お届けしたいと思います。
【第一章 ~産みの苦しみ~
その⑤】
「あの土地、おととい貸しちゃったんだぁ。」
声が出ない。突然の切り返しに全ての思考回路が止まり、早朝の羽田空港ゲートから仲介者の特徴ある車の屋根、平等院別棟に備え付けられた太陽光発電からの反射光が、何故か走馬灯となって脳裏をよぎった。仲介者を介しているとはいえ、太陽光発電の用地獲得にあたり、合意に至った案件を他者に奪われた経験は無く、有効な応対話法を持ち合わせていなかった。
慌てふためく私に対し、好好爺はさらに驚愕な情報を投げかけて来た。
「借主は地元で太陽光発電を生業とする会社で、隣町でおたくに貸す予定だった同級生もそこに貸したみたいだよ。」
事はかなり深刻で、口約束で仲介者が押さえた太陽光発電用地を同業他社が地元のよしみで切り崩しにかかっており、その範囲は訪問予定エリア全域に及ぶようだった。好好爺によると契約書の取り交わしは成されておらず、敵も口約束。どうにか翻意を促すも、'地元のよしみ'に跳ね返され、好転の兆しが全く見えない。出されたオロナミンCも底をつき、いつお引き取りを宣告されてもおかしくない空気が流れ、万事休すを確信して宙を見上げた時、
「Matsui?」
思わず口から出た言葉だった。
~つづく~
0 件のコメント:
コメントを投稿